シーバスの謎
公開日:
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最終更新日:2015/12/12
雑記
以前ふらっと酒屋に立ち寄った折、ブレンデッドスコッチの棚を何気なく眺めていると一本のボトルに強く好奇心をそそられた。
その時は荷物も多かったし、決して安い酒ではなかったので結局買わずに立ち去ったのだけど、後日改めて店を訪れるとその珍妙な一本は既に巣立ってしまっていた後で、なぜあの時無理してでも家に迎え入れなかったのだとひどく後悔したのだった。
先日、幸運にもその酒と再度の邂逅を果たすことができたので、ここで会ったがなんとやらと迷わず雁首ひっ捕まえて我が家の貧相なコレクションの一員となって頂いた。
シーバス。
釣りを囓り、ウイスキーを常飲する身として強烈な瞬発力を感じずにはいられないラベルだった。
間違いなくあの名酒『シーバース・リーガル』を本歌取りとした洒落だろう。
ちなみにこちらがそのシーバース。
現行品と多少デザインは異なるが、攻殻機動隊SACのEDでイシカワさんと一緒に映っている酒としても有名な一本だ。
(・・・そうか?)
普段はシングルモルトで勉強中の身だが、これほど気になる出で立ちをした酒も今後そうそうないであろうといったん主義を曲げ、意気揚々と封を切る。
少し加水して舌の上で引っかき回すと、まずは強く塩の気配。少し遅れて堅固なミネラルが跳ねた。
なるほど、体が名を表した、海の味がするスコッチだと感慨に漬る。
ラベルに印象を引っ張られているだけではないか?
そうかもしれない。
なんでもいいのだ。酒は酔うためのものであり、正否など些事である。
とにもかくにも、この琥珀色の魚は間違いなく美味かった。
さて、しばし意識をスコットランドの荒波に預けながらぼんやりラベルを眺めていると、次第に妙な違和感が膨らんでくる。
ちょっと待てよ。
この酒、なんでシーバスなのだ。
シーバースの捩りなのはわかる。わかるが、もしかするとこれは『不可能犯罪』なのではないか。
ただの洒落として受け取ってから幾日を経て、別なる疑問がキックバックとして襲ってきた。
シーバス、つまり鱸(すずき)という魚は日本近海に広く分布しているが生息域はおおよそ本州北端までに留まり、北海道まで上るともうほとんど捕れない魚である。
ならば、スコットランドみたいに寒い地域でこの魚が捕れるはずはない。
スコッチのラベルに起用されるほど認知されているとはとうてい思えないのだ。
だったらなぜ、ブレンデッドスコッチのラベル上でこのような『洒落』が生まれ得たのか。
気になる。ひどく気になる。
唸り続けながらもう一度琥珀色に唇を這わせると、さらに深い魔性の中へ吸い込まれていくような気がした。
と、ここまで書いて記事をアップしようとした寸前、嫌な予感がして念のため調べてみたら北海に『ヨーロピアンシーバス』とかいう日本とは別種のスズキがいるらしい。
いるのかよ。なんだよもう。
すっかり無駄な悩みに時間を費やしてしまった。くやしい。
くやしいのでいつかスコットランドの荒磯からこの『ヨーロピアンシーバス』という奴を釣り上げてみたくてたまらなくなった。
そうだ、釣られたから釣り返してやるのだ。
場所はスペイサイドがいい。
そこで釣れるのかどうかは調べていない。
調べたらまた夢想が徒労に終わるかもしれないから、計画が実現可能になるその瞬間までいっそ調べないでおこうかと思う。
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